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開館25周年記念
肉筆浮世絵 ―師宣・春章・北斎たちの筆くらべ
2025年4月12日(土)~5月25日(日)
月曜休館 ※5月5日(月・祝)は開館
展覧会概要
本展では、出光コレクションから精選した肉筆浮世絵の数々を展示します。浮世絵といえば、一般には木版画がよく知られますが、17世紀から19世紀にいたるまで、ほとんどすべての浮世絵師は版画の下絵だけでなく、完成までの作業をみずからが担う絵画(肉筆画)の制作に旺盛な筆をふるっています。画家たちのテクニックがあますところなく注ぎ込まれた肉筆浮世絵。その伸びやかで精彩に富んだ表現を、心ゆくまでご堪能ください。

第1章 憂世から浮世へ ―菱川師宣と宮川長春
戦乱期にあった厭世的で刹那的な風潮は、江戸時代に入ると徐々に変わっていき、憂き世を描いた絵画も、享楽的な風俗図から将軍のお膝元である江戸の市井で明るく快楽的なものに発展していきます。そのころ、菱川師宣(?-1694)によって確立された風俗画が浮世絵です。師宣が描くしなやかに立つ美人の様は「菱川様の吾妻俤」と称され、人口に膾炙しました。師宣以降、当世・俗世の風俗を描いた浮世絵は、江戸時代を通じて人々に愛され、師宣を慕った宮川長春(1682-1752)をはじめ、多くの絵師を輩出しました。

立姿美人図
懐月堂安度 江戸時代(18世紀) 出光美術館蔵
第2章 俗中の雅 ―勝川春章と鳥文斎栄之
浮世絵に描かれたのは、遊郭や芝居小屋など、まさに現世の好色気味の俗世の様子で、幕府や禁裏などの上流階級で求められる絵画とは別趣のものでした。伝統的で文学的なそれを「雅」と呼ぶのであれば、浮世絵は「俗」と呼ぶべきものですが、この「雅」と「俗」は徐々に混じり合い、より複層的に発展していきます。勝川春章(1743 -92)や鳥文斎栄之(1756-1829)の清雅な美人画は、浮世絵を受容した俗の人々だけでなく、大名や上皇など雅とされる上流階級の人々にも好まれ所蔵されました。

桜下三美人図
勝川春章 江戸時代(18世紀) 出光美術館蔵
第3章 爛熟のとき ―葛飾北斎と歌川広重
菱川師宣に始まった浮世絵の流れは、徐々に川幅を広げ、宮川派や勝川派そして喜多川歌麿の喜多川派、歌川派といった浮世絵師たちを生み出し、支流を増やすように隆盛しました。葛飾北斎(1760 -1849)は、初め勝川春章に弟子入りし、春章亡き後、狩野派、琳派など様々な画風を我がものとし、貪欲に作画活動を行って葛飾派を形成しました。また歌川広重(1797-1858)は歌川豊広(1773-1830)に弟子入りし、特に風景画にその才を顕しました。江戸時代後期に至り、まさに浮世絵は画技、画題共に爛熟の時を迎えたのです。

春秋美人図 対幅
葛飾北斎 江戸時代(19世紀)出光美術館蔵
第4章 掌中の〈悪所〉
悪所とは、遊郭や芝居小屋など享楽と快楽を求める人々が集まり、まさに人の欲望や本能がむき出しになる場所。しかし、それを覆ってなお余りある余興や遊びが文化となった場所でもありました。そうした、悪所を小さな画面に精緻で親密に描いた絵巻や小屏風を紹介します。

江戸風俗図巻(上巻部分)
菱川師宣 江戸時代(17世紀) 出光美術館蔵